なんの変哲もない日

この田舎の犬は都会で死ぬかもしらん

映画『ニュー・シネマ・パラダイス』感想

ユナイテッド・シネマジブリ作品が上映されているらしいから見に行こう、と思ったらこの映画も特別上映になっていた。
昔のジブリ作品にしても『ニュー・シネマ・パラダイス』にしても、「間違いない名作だろうけど、家で見たら集中力が切れそう」と敬遠し続けてきた。実際のところ、この理由で見ていない古典的名作が山のようにある。ちなみに『レオン』もサブスクのマイリストに何年も入れたままにしているので、近々見に行く予定。
以下『ニュー・シネマ・パラダイス』のネタバレあり。

映画「ニュー・シネマ・パラダイス完全オリジナル版」日本版劇場予告
故郷のシチリア島を離れ、30年以上帰っていないサルヴァトーレ(トト)。母親から子供の頃慕っていた映写技師のアルフレードの訃報を聞き、彼と過ごした幼少〜青年時代を回想する。
トトは幼い頃、映画館とアルフレードのいる映写室に通い詰めていた。戦後間もない時期で、神父の検閲によって映画のキスシーンや露出の多いシーンはフィルムを切ってカットしていた。トトはアルフレードに「切ったフィルムがほしい」とねだるが、「お前にあげるがフィルムはここで管理する」とかわされる。
ある日映写室で火事が起き、アルフレードは視力を失い仕事ができなくなる。トトはアルフレードの代わりに、少年ながら映写技師として働き始める。数年後、トトが兵役から戻ってくると、知らない男が映写技師の仕事に就いていた。アルフレードは「村を出てもっと大きなことをしろ、郷愁にかられても戻ってくるな」とトトを突き放す。そしてトトはローマに行き、長い間故郷に戻ることはなかった。
アルフレードの葬儀のために故郷に帰ると、形見としてフィルムが遺されていた。そのフィルムは、子供の頃アルフレードにねだったキスシーンを集めたものだった。その映像を見ながら、子供のように笑うトトであった……という話。

全体的におおらかな雰囲気なのが良かった。イタリア映画は登場人物が饒舌な印象があるけど、この映画もやはりそうで。映画館で観客が大声でリアクションしながら鑑賞しているシーンが度々あって、今で言う応援上映みたいで笑った。主人公が年齢を重ねるにつれ、映画も少しずつ性的な描写が増えていて、時の流れを感じられた。
共産主義者が白い目で見られていたり、「ナポリ野郎がサッカーくじを当てた」「北部の奴は運が良い」と言われていたり、当時のイタリアの事情について全然知らないので興味深かった。
なんといってもアルフレードおじさんが、トトのことを想って「村を出ろ」と厳しく言うところが良い。そのおかげでトトは映画監督として出世して、でも女性をとっかえひっかえしてどこか寂しいところもあり、というのが深い。アルフレードがトトと別れるときに言った「自分のすることを愛せよ。子供のとき、映写室を愛したように」という言葉が心に残った。
そしてラストシーンのトトの笑顔が、本当に子供時代のトトにそっくりに見えるのに泣いた。少年と中年男性だし、それまで面影があるなとも全然思わなかっただけに、不思議なぐらい。まあ、トトが昔したフィルムをもらう約束については、他の人の感想を見るまですっかり忘れていたのだけど……。それでもあのラストシーンは良かった。