なんの変哲もない日

この田舎の犬は都会で死ぬかもしらん

映画『シングルマン』感想

ネタバレあります。なんで今まで見てなかったんだよ〜と思ういい映画だった。コリン・ファースの眼鏡とスーツ素敵だなあ〜と思ったら、監督がトム・フォード。さもありなん。流石に美しい映像だった。


映画『シングルマン』予告編

大学教授のジョージは、長年の恋人ジムの急逝に落ち込み、自殺しようと考える。友人などに遺書をしたためて入念に準備するが、そんな日に限ってスペイン人のイケメンにナンパされたり元カノのチャーリーに呼ばれたり、学生のケニーが熱視線を送ってきたりする。なかなか自殺できずに行きつけのバーに行くと、自分を慕うケニーが入ってくる。二人で楽しく話したあと、海に泳ぎに行き、そのままジョージの自宅に泊まることに。ひょんなことからケニーはジョージがゲイだと気づいて裸になって様子をうかがうものの、とくに何も起きず。その後ジョージは酔いつぶれて寝てしまい、起きてみると晴れやかな気分になっていた。自殺のための銃を片付け遺書を燃やしてリラックスしていたところ、ジョージは急な心臓発作に見舞われる。死んだ恋人ジムからキスされる幻影を見ながら、ジョージは安らかに息を引き取った……という話。
何はともあれ、ジョージの色気がすごい、というかコリン・ファースの演技がすごい映画。レイティングGでとくに性描写もない(裸が出てくるぐらい)なのになんであんなにエロティックなのか。1962年を生きるクローゼットのゲイで、大学教授という設定も彼の雰囲気とよく合っていた。ゲイは目で合図を送ると聞いたことがあるけれど、この作品でも目で会話するシーンが沢山あった。
ポスターではかなり目立っている美女・チャーリーは思ったより出演シーンが少なかった。彼女はジョージと若い頃に関係を持ったことがあって、ゲイとわかった今でも彼を好きなんだけれど、ジョージは全然つれない。「ジムとの愛は本当の愛ではなかったんじゃ?」なんて期待を込めて言って、ジョージに激怒されてしまうというなかなか可哀想な役どころだった。ジョージが親友としてチャーリーを大事にしていて、優しく接するのがかえって罪作り。でも、チャーリーって本当にジョージが好きなのか、ジョージと付き合っていた若き日の自分が好きなのか。どっちもか。
そしてジョージに近づいてくるケニーは、いわゆる「最強の年下攻め」。青くさいんだけど目がきらきらしていて、純粋で無防備だけどたまに鋭いことを言う美青年。そりゃジョージの心をくすぐるよな、と思う。バーでの会話から海に行くシーンまでのケニーはやり手だし(本人はたぶん無自覚)、ジョージは終始セクシーだし見所が多い。ちなみにケニーは名字がポッターなので、ジョージから「Mr. Potter」と呼ばれているのもちょっといい。部屋で銃を持って寝ていたのは、ジョージのことが心配で自分が持っておこうと思ったんだろうか。
最後、ジョージが生きる気力を取り戻したところで死んでしまうオチには驚いたし一瞬がっかりした。でも、人生ってそんなものかもなという諸行無常を感じるという意味では、良いラストかもしれない。