なんの変哲もない日

この田舎の犬は都会で死ぬかもしらん

映画『風の電話』感想(ネタバレあり)

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東日本大震災で両親を亡くし、おばと二人で暮らすハル(モトーラ世理奈)。ある日おばが倒れてショックを受けたのをきっかけに、ハルは故郷の岩手県大槌町に向かうことに。同じく震災による傷を抱えた男性や、父親を入管に収容されたクルド人家族などと出会い旅しながら、ハルは亡くなった人と電話ができるという「風の電話」(実際に岩手県におかれている)にたどりつく。
全体的に、やっぱりモトーラ世理奈ちゃんいいな〜〜とくべつなオーラがあって好き!と強く感じた。あと、『少女邂逅』のときは、台詞回しはちょっとぎこちないかな……と思ったけど、そのときに比べて演技も良くなったと思う。静と動のバランスが絶妙で、よく考えればスーパーかわいいモデル兼女優なのに「内気な今どきの普通の女の子」っぽさがちゃんと出るのが凄い。これまで、写真にしても映画にしても彼女の「少女性」や「未成熟な危うさ」ばかりが重宝されすぎている(たしかに魅力的だけど)気がしていて。この映画もそういう部分はありつつ、今だけじゃなくて、この先の女優としてのモトーラ世理奈ちゃんに期待できる作品だった。偉そうな感想だけど、少女以外の色んな役柄をこれからやっていけるんだろうなと感じた。
ストーリーに関しては、最後の電話のシーンとかやや冗長に感じたけど、静かな演出で良かった。東北にはあまり縁がないけれど、東日本大震災のことを改めて意識する良い機会になった。脇役の面々がとにかく豪華かつ素晴らしかった。西田敏行さんは「特別出演」どころじゃない目立ち方。元原発作業員の息子のことを心配したり、福島から移住した人たちへの差別についてとうとうと語ったりするシーンのリアリティーに圧倒された。あの話止まらなくなるおじいちゃんの感じを演技で出せるのが凄い。妹が自殺して亡くなり、妻と別れて一人で母を介護する男性を演じた三浦友和さんも印象的だった。色んな痛みや喪失を経験しながら、「生き残ったから生きていく」人たちの姿が描かれていてよかった。