なんの変哲もない日

この田舎の犬は都会で死ぬかもしらん

ルーピンとトンクス

昨日に引き続き『ハリー・ポッター大事典Ⅱ』をぺらぺらめくっていたら、今更ルーピン&トンクスカップルの良さに気づいた。映画ではこの夫婦のシーンって少なかったけど、原作だとそれなりに結婚までの経緯が書かれていたんだった。
ニンファドーラ・トンクスは、シリウスの従姉アンドロメダとテッド・トンクスの間に生まれた魔女。七変化の能力を持っている。『ハリー・ポッター大事典Ⅱ』によると、最初は陽気だったけど、6巻では見るからに落ち込んだ姿に。その原因は、ルーピンに想いを打ち明けたところ「自分は歳を取りすぎていて貧乏すぎるし、危険すぎる」と断られたことだった。それでも、ビル・ウィーズリーが狼人間に噛まれたにもかかわらず結婚を望んだフラー・デラクールを見て、ルーピンの気持ちは変わり二人は結ばれた。二人とも不死鳥の騎士団メンバーなので、いわゆる職場結婚
著者のJKRいわく、「彼(ルーピン)は文字通り、そして比喩的に傷を負った人間です。大人だって問題を抱え、それと闘っているということを、子供たちに分かってもらうことは大切だと思っています。彼が人狼であることは、人々が病気や障害に対しどのように反応するかを比喩的に示しているのです」とのこと。
私はルーピンの「優しく尊敬できる大人」である部分と「人狼であることにコンプレックスを持っているがゆえに、自虐的で閉鎖的な人」である部分が共存しているところに魅力を感じていて。本当に児童書の登場人物で、しかもグリフィンドールなのかって疑問に思うくらい複雑な内面を持っているところが好き。トンクスはルーピンよりも一回りほど若く、直情的でユニークな性格だからこそルーピンの心の壁を(やや乱暴に)壊すことができたのかなと思う。
セブルスは葛藤を抱えて生きていたけど、ハリーを守る使命を全うしたことで、読者にもわかりやすい形で救われた(と思いたい)。その一方でルーピンの苦悩やそこから少し救われる過程は、一見わかりにくい。明らかにひねくれた性格のセブルスと比べて、ルーピンは温厚で、成熟した大人に見える。学生時代のエピソードなどでちょこちょこ影の部分も見せつつ、主人公のハリーたちにとっては「頼れる優しいルーピン先生」であり続ける。
だから6~7巻あたりで、人狼である自分が結婚して子供を作ったことへの抵抗感や、本当にこれでいいのかという葛藤で苦しむルーピンの話は印象的だった。そこまで踏み込んで書くのか〜と思ったし、単純にルーピンってそこまで感情を爆発させるんだという驚きもあった。温厚な面は、もちろんルーピンの性格もあるだろうけど、人を自分の内面まで立ち入らせないための工夫でもあったのかもしれない。そう考えると、ルーピンの生き方を動揺させたトンクスの存在はやっぱり大きい。
本当に今更な話だけど、ルーピンとトンクスのエピソードは素敵。