なんの変哲もない日

この田舎の犬は都会で死ぬかもしらん

最近見た映画の感想

なかなかブログに書けずにいたけれど、相変わらずよく映画を見ている。このところ、心にゆとりがありあまっているのか、かえって長い文章を書く気になれない。手短に。ネタバレあります。

・マイ・ベスト・フレンド


映画『マイ・ベスト・フレンド』日本版予告

幼馴染で親友同士のジェスとミリー。結婚や出産などなど、いつもジェスより先を行っていたミリーが、末期がんをわずらう。そんなとき、ジェスは長年の不妊治療が実って妊娠するがなかなか言い出せない。そうこうしているうちに、病気で自暴自棄になったミリーと喧嘩になり一度は絶交するが、仲直り。ミリーは病院を抜け出してまでジェスの出産に立ち会い、ジェスもミリーの最期を看取ったのであった、という話。

話の内容から当然泣くだろうとは思っていたけど、号泣した。親友が末期がんになるなんて想像しただけでつらい。登場人物が皆一長一短あって、すれ違う様子がリアルだった。イケてて目立ちたがりなミリーと、そんな彼女にあきれつつ、憎めないと思っているジェスの関係性が、「この二人って昔からそうだったんだろうなあ」と思えて泣けてくる。夫たちは正直頼りなかったけど、実際にこういう状況にうまく対処するのは難しいだろうな。

全体的に、思っていることと逆のことを言うタイプの皮肉が多くて、いかにもイギリス映画という感じ。

スプリング・フィーバー


映画『スプリング・フィーバー』予告編

探偵が依頼を受けて浮気調査をしたところ、ターゲットの男性はある(沖田浩之似の)ゲイ男性と不倫していた。そのターゲットの男性は、不倫が奥さんにバレて激怒されたうえに不倫相手にフラれて自殺。探偵は、ターゲットの不倫相手だったジャンと関係を持つようになる。探偵にはリー・ジンという彼女がいたが、なぜか3人で旅行してみたり、その途中でリー・ジンが行方をくらましたりする。最終的には、ジャンはルオとも関係を断ち、他の人と同棲している様子。自殺した男性の奥さんに刺されてけがをした箇所に花のタトゥーを入れてみたりしつつ、日々を過ごしていくのだった……という話。こうして書いてみても、あんまりよくわからない話だな。オム・ファタール物といったらそれまでなのだけど。

リー・ジンと探偵とジャンが、いびつな関係に気づいていながら仲良くカラオケや水遊びに興じるシーンが叙情的で好きだった。ショートカットのリー・ジンがかわいい。あと、浮気調査されて逆ギレした夫にノータイムでキレる奥さんも大好き。結構女性陣が魅力的だったのに出番が少なくて物足りなかった。個人的に人の裸の映像が苦手なので、性描写満載のこの作品は向いてなかった。

天然コケッコー


天然コケッコー(予告編)

小・中あわせて生徒が10人弱の田舎の学校に、東京からかっこいい転校生がやってくる。主人公のそよは、転校生・大沢くんとなんとなく付き合い始め、少し冷たいところのある彼と時々喧嘩したりいちゃついたりする。友達付き合いや家族の話もありつつ、最終的にはそよと大沢くんは同じ高校に進学するのだった……という話。

なんてことない話なんだけど、大沢くん(岡田将生)とそよ(夏帆)がさわやかで和む映画だった。主演の二人は当時10代で初々しい。前岡田くんのフォトエッセイか何かで読んだけど、この映画のキスシーンが本当のファーストキスだったらしい。かわいい。都会(東京)と田舎(島根)の描き方はベタではあるのだけど、地方出身者から見た東京ってこんな感じだよねっていうのはわかる。

あと恋愛に関して、大沢くんはすでに「彼女いるのがステータス」みたいな感覚を持っているけど、そよは全然そういう意識がないのが面白かった。男友達に「神社で女の子とキスしたわ〜」とはったりをきかせる大沢くんに、「その服くれたらキスしてもいいよ!」と持ちかけるそよが無邪気でかわいかった。恋愛における嫉妬心がなくて、バレンタインに他の女友達も誘って大沢くんにチョコあげるところも。でも色々総合的に見て、この二人ってカップルとしてうまくやっていけるのだろうか……とは思ったけどそれはそれでよし。

・タクシー運転手 約束は海を越えて


2017年韓国No.1大ヒット!『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』 本予告

ソウルのタクシー運転手マンスプが、高額な報酬につられてドイツ人記者を光州につれていったところ、「光州事件」に巻き込まれ大変なことに。妻に先立たれ一人娘を家に置いてきているマンスプは、途中でこっそりソウルへ帰ろうとするが、光州の惨状を思い出して記者のもとへ戻る。途中で仲良くなった学生が亡くなったり、本人も軍部に追われてカーチェイスを繰り広げたりしながら、命からがら帰宅。ドイツ人記者ユルゲン・ヒンツペーターが持ち帰ったフィル厶をもとに、光州事件の実態が世界に報道されることになった……という話。

なんと実話をもとにした作品。映画と史実の違いについては、マンスプのモデルになったキム・サボク氏のお子さんがインタビューで話している。

japan.hani.co.kr

もう色んな点で見事な作品だし、1980年に起きた「光州事件」について全く知らなかったので勉強になった。またなんといってもソン・ガンホの演技が良くて……『パラサイト』でもそうだったけど、貧しくて粗野で憎めないおっちゃんの役が似合う。ソン・ガンホが泣くシーンはついつられて涙が出る。根っからの善人ではないけどお人好しで、光州の惨状を見て「この状況をなんとか伝えなくては」と思い始める様子が良かった。前半がかなりコメディー・タッチで、途中で気のいい学生ジェシクが歌を歌って食事の席を盛り上げているシーンがあって、なんとなく『スウィング・キッズ』と似たような嫌な予感がしたけど……やっぱり後半はシビアな展開だった。でも検問所で軍人が決定的な証拠を見逃してくれるシーンもあり、厳しい中に希望がある作品だった。最後にヒンツペーターさんの実際の映像が流れたのも良かったなあ。