なんの変哲もない日

この田舎の犬は都会で死ぬかもしらん

映画『あの日、兄貴が灯した光』感想

ネタバレあります。
先日アクセス数が急にはねあがったときがあって、理由ははっきりとはわからないけど、多分ギョンスをひたすら褒める記事が沢山読んでもらえたみたい。その流れで書きづらいけど、この映画はあんまり乗れなかった。この映画を好きな人は読まないほうがいいかもしれない感想です。

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柔道でオリンピックを目指していたドゥヨンは、試合中の事故で失明してしまう。詐欺で長年服役中だった兄ドゥシクは、失明した弟の世話をしたいと涙ながらに語って仮釈放を勝ち取る。しかし長年家に帰らなかったうえ改心していない兄と事故でふさぎ込んでいる弟の仲は最悪。コーチがパラリンピックに出ないかと勧めても、ドゥヨンは頑なに断る。やがて兄弟は心のわだかまりについて語り合ったのをきっかけに仲直り。ドゥヨンがパラリンピックを目指して柔道を再開する一方、ドゥシクは末期がんに冒されていることがわかる。病気の兄を思いながらドゥヨンは大会で勝利をおさめる。しばらくしてドゥシクは亡くなったが、ドゥヨンは兄の助けもあり前向きに暮らせるようになったという話。
なんというか、あまりにも泣かせにかかってるな……という古典的なストーリーでかえって感動しなかった。弟が失明、兄がグレたきっかけはたしか「継母は優しくしてくれたけど、もともと亡くなった実母の看護婦だったので複雑だった」からで、しかも兄がそれほどの年齢でもないのにいきなり末期がんで余命3ヶ月っていくらなんでも……と思ってしまった。いや、そういう複雑な境遇や不幸の連鎖は現実にもあると思うけど、フィクションだからどうしても「泣かせるために登場人物を不幸にしている」としか思えなくて。私は映画『糸』も合わなかったので、そういう映画が苦手なのかな。
もしかしたら「詐欺師前科10犯の兄が弟のおかげで仮釈放されたうえ、ハッピーに暮らしましたとさ」では納得いかない人もいるかもしれない。でも、ストーリーの中で何らかの報いを受けさせるとしても、末期がんじゃなくていいと思った。それこそ詐欺師の贖罪について真剣に描くなら、詐欺の被害者に刺されるとか。そもそもドゥヨンがオリンピックを目指すレベルの実力がありながら失明して、そこから復帰する、というところにもっと焦点を当ててもいいんじゃないかとも思う。ギョンスの目の見えない演技は良かったし、ドゥシクもやってることは最低だけどどこか憎めない雰囲気があって良かったのでもったいない。コーチも結構ばっさり「クズね」とドゥシクに言い放つキャラクターが好きだったけど、あまり活躍せず……。
途中の「ナンパしに行ったら盲目なのをいいことに、自称チョン・ジヒョン似のブスが声かけてくる」(演じてる方はそうじゃないけど、映画上過剰にブス扱いされる)みたいなギャグセンスも古く感じて全然笑えなかった。別に映画だから自由なんだけど、何を笑いにするかの感覚が合わない作品は辛いものがある。
個人的には、あっ良くなりそう、いや、良くない……と思い続ける映画だった。