ちゃんとした感想記事をアップしよう、と思うとなかなか更新できないもので。軽い気持ちで書いてみる。映画『ヘビー級の心』のネタバレあります。
・『ヘビー級の心』
https://www.netflix.com/jp/title/80082749
ネットフリックスで鑑賞。『希望の灯り』でファンになったトーマス・ステューバー監督のこの映画、びっくりするぐらい感想を書いている人が少ない。感想を検索してみても、「自分以外誰も見てないだろって映画をあげる」スレなどが出てきて切なかった。Filmarksのレビューも少なかったのでそこにも感想を書いた。『希望の灯り』より更に冷徹な作品であるものの、やっぱりこの監督の作品にはかすかな希望がある。
借金取りで食いつないでる元プロボクサーが難病ALSにかかり、過去に迷惑をかけた娘との関係を修復しようとするが、空回りする…という悲しい初老男性の話。北野武のヤクザ映画みたいな題材というか。死ぬ前に贖罪を果たすはずが、娘と別居中の娘婿を殴ったり看病しようとする恋人を邪険に扱ったりしてどんどん孤独になっていくのが悲しい。しかし行いが行いだし、昔DVで家庭が崩壊したらしく自業自得としか言いようがない。病気でうまく話せなくなり、電話口であらかじめ録音したテープを流そうとするけど、娘に「(あなたのことは)死んだと思うから」と突き放されるシーンなんて容赦ない。電話を切られて、録音したテープの音声だけが流れ続ける。その様子はとにかく哀れだけど、「ずっとどうしようもない俺だったけど、もうすぐ死んでしまうから周りも優しくしてくれて親子仲も修復してハッピー」という映画より断然良い。
友人が引きこもる主人公に「俺は裏切らない」と言うシーンや、病気で話せなくなった主人公が魚の求愛行動をまねて口をパクパクするシーンがさりげなくて良かった。
映画を見ていて「ちょうどいい」とか「オーバーだな」と思う基準って人によってかなり違うだろうけど、私にはこの監督の作品が合うらしい。人によっては単調、味気ないと感じるかもしれないけれど、このさらっとした描き方が好き。