なんの変哲もない日

この田舎の犬は都会で死ぬかもしらん

気が合うとか似てるとか

イ・ラン『悲しくてかっこいい人』(2018年)をもうすぐ読み終わる。
私は彼女をよく知らなかったのだけれど、1986年生まれで、シンガーソングライターで、映像作家で、漫画家で、エッセイストでもある(巻末紹介より)。そんな多才なイさんのエッセイ。

悲しくてかっこいい人

悲しくてかっこいい人

私はエッセイを読むのが好きだ。エッセイは何冊も読んでいるけど、その人の小説は読んだことがないという作家が何人もいる。例えば、ピースの又吉さんや西加奈子さんなどなど。エッセイにはその作品独自の設定がなく、その人個人の生活に焦点が当てられているのでとっつきやすい。
好きなエッセイにも色々ある。
文体が好きなもの。川上未映子さんのエッセイがそうだ。笑えて共感するもの。西加奈子さんのエッセイ。
そして一番貴重なのが、自分と気が合う、似てると思えるもの。又吉さんのエッセイがそうだ。そして、イさんの『悲しくてかっこいい人』は、まさにそんなエッセイ。

気が合う、似てるなんていうのはとても恣意的だ。嫌いな人がいくら自分と似ていたって、その人との相違点を探して「自分はあんなやつとは違う」と思いたがる。自分が好感を抱いていて、半ば憧れている人に対しては、共通点を見いだして「気が合う」「似てる」と思いたい。
イ・ランさんと私の違うところなど、探せばたくさんある。それでもイさんの本を読んでいて、「私の知っている感情を、ぴったり言い表してくれた」という瞬間がとても多かった。その瞬間だけ、様々な違いはどこかに吹き飛び、著者と自分がシンクロするような感覚がある。
きっと何度も読み返すんだろうなと思う。