なんの変哲もない日

この田舎の犬は都会で死ぬかもしらん

映画『彼の見つめる先に』

あたらしい生活計画を打ち出した舌の根もかわかぬうちに今朝寝坊した。そんなものさ。

先日、映画『彼の見つめる先に』を見た。とても良い作品だった。ネタバレあります。

主人公は男子高校生のレオナルド。幼馴染で親友のジョヴァンナが、生まれつき目の見えない彼をいつもサポートしている。年頃のレオとジョヴァンナは恋愛やファーストキスに期待をふくらませるけど、肝心な相手は現れない。ジョヴァンナはレオが好きらしいけど、レオ本人は全然気づかない。そんな中、転校生のガブリエルがレオと仲良くなって状況は一変。ガブリエルとレオはあっという間に親友になり、ジョヴァンナは蚊帳の外になって拗ねてしまう。そのうち、レオはガブリエルに好意を抱いている自分に気づく。ガブリエルの仲裁もあって仲直りできたジョヴァンナにも、そのことを打ち明ける。ジョヴァンナは初めショックを受けたけれど、レオを応援する。最終的にレオはガブリエルと両想いだとわかり、ハッピーエンドで終わる。

レオがガブリエルに恋愛感情を抱いているとわかるシーンを見て、驚いた自分にショックを受けた。無意識に男女の恋愛が当たり前だと思い込んでいるのに気づいた。だって、思い返せばそのシーンより前にも「男女だったらフラグだと思うだろうな」っていう仲良しシーン満載だったから。自分の固定観念が恥ずかしかった。

この映画、ジョヴァンナの表情が良かったなあ~。ともすれば影が薄くなってしまいそうな立ち位置なのに、しっかり存在感がある。彼女は結局最後までレオにはっきり好意を伝えることはないけど、表情やちょっとしたセリフにレオへの愛情が表れていてかわいい。レオによくちょっかいをかけていたカリーナ(ガブリエルに乗り換えようとする)を嫌っているところなんか幼さがあって、でも最後にはレオの恋を応援して励ます聡明さもあって。それだけにちょっと可哀相に思ったけど、きっと良い相手が見つかるはずだしむしろサイドストーリーが見たい。

あとは、ガブリエルが好青年かつスマートに告白を済ませる恋愛上級者だったので、「ほんとに高校生…?」って震えた。好青年を通り越して人格者。いじめっ子のファビオや露骨にアプローチしてくるカリーナとうまく付き合いつつ、クラスパーティーでもDJして、ジョヴァンナとレオを仲直りさせ、恋愛も成就ってどういうこと? 進研ゼミの漫画に出てた? パーティーの帰りにレオにキスした後、「酔っぱらって何も覚えてないんだよね」と言ってがっかりさせといて、後でさりげなく告白するから怖い。とても恋愛初心者とは思えないので、彼は元々ゲイ(またはバイ)の自覚や同性と付き合った経験があったのかもしれない。

最後らへんの学校のシーンも良かった。いじめっ子のファビオが、ガブリエルに補助してもらいながら歩くレオに「交際は順調だな!」とからかう。それに対してレオが、腕に添えていた手を下ろして、ガブリエルと恋人つなぎをして応える。ファビオの仲間が「あいつらマジだよ」と言うと、ファビオもなぜか困ったように笑う。ジョヴァンナも振り返ってニヤっとするのがいい。レオは色んな困難に臆せずぶつかっていく、というかぶつかっているとも思っていなさそうなひたむきさが本当に良い。

後半だけもう1回見直したけど、つくづくジョヴァンナいい子すぎるね…幸せになって! というか登場人物ほぼいい人の優しい映画。もちろん、障害や同性愛の現実はこんな簡単なものじゃないっていう批判もありうる。でも悲恋だとか禁断の愛!みたいなゲイ映画だけじゃなくて、こういう作品がもっとあるといいなと思った。