なんの変哲もない日

この田舎の犬は都会で死ぬかもしらん

映画『少女邂逅』感想

眠れない夜に『少女邂逅』を見た。ネタバレあります。


「少女邂逅」本予告編

いじめを受け、学校ではうまく声を出すことさえできないミユリ。「紬」という名前をつけてこっそり飼っていた蚕も、いじめっ子の清水たちに捨てられてしまう。つらい日々を過ごしていたとき、「紬」という名前の女の子が転校してきて、ミユリの生活は一変する。あっという間に仲良くなった二人は、秘密で沖縄旅行の計画をする。その間に、紬の助けもあってミユリは一緒にお弁当を食べる友達ができる。新しい友達と仲良くしつつも、ミユリと紬はお互いを特別な存在だと感じている。

ある日、ミユリは清水(どうやら昔はミユリと仲良くしていたらしい。幼馴染?)から紬が援助交際をしているような写真を見せられる。ミユリは清水を相手にしないで帰ったものの、その写真が気になる。そんな折、紬は「大事な話がある」とミユリを呼び出して、沖縄行きの航空券と現金を差し出す。テストを休んで沖縄に行こうと言う紬に押し切られてミユリは一緒に出かけるも、途中の駅で眠った紬を置いて帰ってしまう。紬は父親に見つかり連れ戻され、ミユリは何事もなかったようにテストを受ける。やがてミユリは東京の大学に合格して、上京することに。駅のホームにやって来た清水が、「紬は父親に性的虐待を受けてて、沖縄に行くために身体売ったうえに餓死した」と告げる。なんともいえない表情で電車に乗るミユリであった。という話。

Filmarksに書いた感想と重なってしまうのだけど、とにかく雰囲気が良くて主役二人がはまり役で、これぞガールミーツガール映画という感じ。映像もきれいで見入った。お互いをスマホで撮った風の映像なんて良くてね…永遠に幸せなシーンを見ていたかったよ…というつらさ。紬を「主人公を助けてくれるミステリアスな女の子」で終わらせないところも良かった。あと、途中で仲良くなる女の子たちvsミユリ・紬みたいなありがちなしょうもない喧嘩が起きないところも素敵。なんというか、友達が複数いても「この子は特別」みたいなことって当然あって。でも「特別」な子以外も、ちゃんと友達ではある。そういう関係がよく描かれていた。繭のために重宝されて、成虫になったとしても筋力がなくて飛べない蚕と、大人に管理されていて、自由に身動きがとれない女子高生(主に紬)を重ね合わせるのも良いし。「身体しか価値ないじゃん」って台詞が重い。紬の父親を始めとして、この映画に出てくる男性ってなんとなくヌルっとしていて生理的嫌悪感を催させるというか、「女子校の学生から見た異質な存在」をうまく表現している感じがした。ちょっと恥ずかしい台詞が多いけどむずがゆくて良い。

ただ、やっぱりどうしてもオチが腹立たしくて悲しくてたまらなかった。未成年の女の子が性被害に遭うというのは十分ありうることなので安直と言いたくはないけど、「女子高生が性的虐待と売春でダブルに性的搾取を受けたうえ、逃げ場もなく餓死(おそらく反抗の意味を込めた自殺)しました」なんて悲しすぎる。それがあながち非現実的と言えないこと、そういう結末にしたのがほぼ同世代の女性監督であることも含めて絶望的な気持ちになる。結末が許せない変えてくれというのではなくて、ただ悲しくて、紬も救われてほしかったと思う。ミユリが自分を救ってくれた紬を救えないという無力さとか、限界が描かれているのは好きなんだけど。紬の人に言えない苦しみが、性的虐待じゃなかったら……でも物語上それしかないのかな、とも思うし、うーん。つらい映画だ。それでも好きだ。