なんの変哲もない日

この田舎の犬は都会で死ぬかもしらん

三谷幸喜作品を見る

映画「記憶にございません!」を見てきた。ネタバレあります。


映画『記憶にございません!』予告

シニカルで面白かった。三谷さんの作品は、好きなときもあればつまらなかったなと思うときもある。よく考えてみると、何かしらの真面目にやらないといけない要素がある三谷作品は好きなのだと気づいた。たとえば、
新選組!」→大河ドラマ新選組は悲しい結末を迎える。
古畑任三郎」→ほぼ殺人が起こっている。
笑の大学」→検閲という政治的なテーマ。
というように、物語を引き締めるスパイスがあるもの。今回の「記憶にございません!」も、政治がテーマになっていて、風刺が効いている。
三谷監督は笑かしたいというサービス精神が旺盛な人だと思う。コント並のコテコテのギャグを繰り返すことも多く、はまればとても面白いのだけど、スベると寒い印象になる。三谷作品に多少好意的な私でも、正直「ふざけすぎて寒いな」と思うときもある。ギャグの量や内容の好みは本当に多様だけど、私はちょっとスパイスのある三谷作品のほうが好きだ。
今回も、中井貴一と野党の吉田羊が不倫してる設定はやや陳腐で男女の友情のほうが良かったな……とか、アメリカのイメージがコテコテすぎでは……とか思うところはあった。
政治家の会話がいくら何でも雑すぎる、という感想を見かけた。でも、現実で映画よりもひどい状況がしばしば起こっているので、「記憶喪失になった政治に無知な男でも、首相の仕事は務まる」という前提が皮肉で面白い。「記者を助け起こした」とか「国会で妻に愛の言葉を伝える」といった政策とは関係ない部分で首相の好感度が上がるのも、滑稽だけどリアル。
安倍首相は三谷監督と対談して、この映画について「消費増税の所は(劇中で最悪と言われる首相と)ちょっとかすったかな」と呑気に話されていたよう。それよりも日米関係の部分が痛烈な風刺だと感じたけど。首相が内心怒りながら大人の対応で褒めていたならまだしも、本気で「面白いなあ、あはは」なんて見ていたのなら、現実の国政はかなりまずい。

最後におすすめポイントを挙げる。見るか迷っている人に参考になればうれしい。
こんな人におすすめです↓
・出演している役者さんが好き(とくに中井貴一さん、小池栄子さん、ディーン・フジオカさん、石田ゆり子さんファンの方)
・おじさんの戯れが好き
・シニカルな笑い、政治風刺が好き
・三谷作品が好きor嫌いではない
逆に、現政権万歳という方や、政治の話が苦手な方には向かない作品だと思う。好き嫌いは分かれそう。個人的には、小池栄子さん&石田ゆり子さん&斉藤由貴さんという好きな女優さんたちが活躍していてうれしかった。