なんの変哲もない日

この田舎の犬は都会で死ぬかもしらん

映画『レオン 完全版』感想

映画『レオン 完全版』を見てきた。ネタバレあり。


映画「レオン 完全版」日本版劇場予告

悪徳な麻薬取締官のスタンらに家族を殺された少女マチルダは、隣人の殺し屋レオンに助けを求める。マチルダは大事な弟を殺した相手に復讐すべく、レオンに殺し屋の技術を教えてほしいと頼み込む。レオンは初め断ったが、しぶしぶ了承。途中マチルダがレオンに恋したと言ってキスやセックスを求め、レオンを困惑させることも。無学なレオンはマチルダに読み書きを教わり、レオンはマチルダに殺し屋の術を教える日々。最後は二人がスタンたちへの復讐を試み、スタンは警察の人員をフルに活用して応戦する。レオンはマチルダを逃がすことに成功したが、スタンと相討ちになって死ぬ。マチルダはレオンに仕事の依頼をしていたトニーに殺し屋になりたいと言うものの一蹴されて、学校に戻る。校長先生は事情を聞き、マチルダを優しく迎え入れるのであった……という話。

全体的に、マチルダが「子供であることによって無条件に助けられている」シーンが多くて、そこがとても好きだった。

たぶん、作り手の意図とは違う見方なんだろうけど。元々の脚本ではレオンとマチルダのセックスシーンもあったらしく、そのままだったら全く違う映画になっていたし、こんなに長く愛される作品にはなっていないと思う。

filmaga.filmarks.com

監督はわりとロリコンの気があるんだろうなというのは作中で随所に感じられる。レオンが「殺し屋は床より明るい服を着ちゃいけない」と言うわりに、マチルダの衣装替えがやけに多いし露出度も高い。ナタリーの見た目が幼いせいもあるのだろうけど、もっと直接的な表現のある『ロリータ(1997)』よりも危うく感じた。とはいえ、ナタリー・ポートマンが撮影は楽しかったと振り返っているのでほっと一安心。

www.google.com

閑話休題

女子供でも鼻歌を歌いながら殺せるスタンは例外として、他の多くのシーンではマチルダは「子供であること」で救われている。レオンが最初に面倒なマチルダを始末しようとして思いとどまったのに始まり、キスやセックスを断ったこともその一例と言える。これは、二人の関係を「年の差のある恋愛」ととらえるか「親子愛に似たもの」ととらえるかによって解釈が分かれるだろう。私は後者で見た。通常版と完全版の違い等を調べたかぎりでは、作り手の考えとしてはラブストーリーっぽいけど。

レオンは「大人になれなかった子供」ととらえられる。レオンは読み書きができず、仕事を依頼してくるマフィアのトニーの言うがままに彼にお金を預けている。何らかの発達障害があるようにも見える。19歳のときの悲恋を引きずり、大人になりきれないのかもしれない。それでも、トニーに「自分に何かあったらマチルダに預かっている金をやってくれ」と頼むレオンは、まがりなりにも彼女を保護する大人の役割を果たそうとしているように思う。「もう大人よ」と言ったマチルダに、「俺は逆だ。年だけは取ったけど、これから大人になろうと」と返しているように。

最後の銃撃戦のなかでマチルダが建物から逃げ出しても逮捕されはしない。多分レオンが稼いだお金を使い込んでいるであろうトニーでも、マチルダが殺し屋になるのを止め、最低限の小遣いを渡している。最後に学校で先生がマチルダを守ると約束してくれるのも、彼女が子供だから。早く大人になりたがっているマチルダが、「子供であること」で救われるのがとても良い。よく考えれば、マチルダは、初めは「子供であるせいで」ろくに育児もせず暴力を振るう親から逃げられない少女だった。レオンと出会ったことで、彼女が安心して子供でいられる場所ができたんだといいな。

偶然の出会いによって、レオンは子供から大人に、マチルダは大人から子供になっていく。そんな映画として見た。