なんの変哲もない日

この田舎の犬は都会で死ぬかもしらん

NHKスペシャル「憎しみはこうして激化した〜戦争とプロパガンダ〜」感想

昨日沖縄戦のドキュメンタリーを見て、「敵を同じ人間ではなく、異質な他者として見る度合が高くなるほどより残酷になれるのではないか」と思った。そして、戦う両者の見た目が違うほど「同じ人間」という意識が薄れやすいのでは、とも。その他に敵を「非人間化」する方法としては、やはりプロパガンダかなと思って、このドキュメンタリーを見てみた。

www.nhk-ondemand.jp

この作品は主に太平洋戦争中のアメリカのプロパガンダ映画と、検閲で非公開にされた残酷な映像(無残な姿で亡くなっている沢山の遺体や、発狂するアメリカ兵など)を取り上げている。ネットフリックスに入っている「汝の敵日本を知れ」(「敵を知れ」)も少し流れていた。アメリカ国民は1943年の後半になっても「戦争をあまり深刻に考えていない」人が半数以上いて、そうした人々にもアピールして戦時国債を売りさばき、戦費を調達しようという狙いでプロパガンダ映画が作られたそう。戦時国債を買ってもらうために「戦争の英雄」たちを招いてイベントを行っていて、その様子からして日本と全然違う。もちろん元々の衣服などの差はあれ、多くの人が平時と変わらない格好で、華やかな女性もいた。しかも戦時国債だけでかなりの戦費を調達していて、これは負けるよな、というのがあらゆる角度でわかってしまう。
また、アメリカ側はサイパン島の女性が赤ちゃんを海に投げたあと自殺するシーンを公開して、「日本人は民間人も異常な精神性を持っている」ことの表れとして宣伝していた。ただし、二人の遺体が浮いているシーンなど、同情を誘う部分はカットされたよう。今回のドキュメンタリーでも沖縄戦のほうでも、元アメリカ兵が「なぜ投降しないのか」と思った旨を話していて、アメリカ人にとっては非常に不思議だったんだろう。
日本のプロパガンダは少ししか触れられていなかったけど、特攻隊について「祖国に永久の別れを告げる若き英雄たち」といった調子で報道されているのには時代を感じた。ほぼ確実に「人が死ぬ」ことが、国の役に立つという理由で公的にたたえられる恐ろしさ。

ちなみに、「非人間化」で調べてみたら、「残酷行為における他者の非人間化と自己の道具化について」という論文が出てきた。そのものずばりなテーマ。
www.jstage.jst.go.jp