なんの変哲もない日

この田舎の犬は都会で死ぬかもしらん

ヒトラーの甥

ネットフリックスで、ドキュメンタリー「ヒトラー兄弟の誓い」を見た。ネタバレあり。ドキュメンタリーもネタバレっていうのかな。

このドキュメンタリーは、ヒトラーの異母兄アロイス・ヒトラーと妻ブリジッドの間に生まれたウィリアム=パトリック・ヒトラーが主人公。つまり、ヒトラーの甥。
彼は元々イギリスで暮らし、イギリス国籍を持っていた。でもヒトラー姓を理由にイギリスで職を追われ、ドイツに渡り叔父に職を融通してもらう。
ドイツでは「ヒトラーの名字を騙るとはとんでもない」と逮捕されたり、「イギリスのマスコミに叔父とうまく行ってないって言うぞ」とヒトラーを脅したりと波乱ずくめの生活。
結局、叔父にも煙たがられ、身の危険を感じたのか1939年、ウィリアムは母と共にアメリカに渡る。そこで大手メディアと契約し、ヒトラーネタで講演をして稼ぐ。実際の映像で、「僕の口髭を見て誤解しないで。僕は良い人間です」なんてジョークを言う姿はいかにもお調子者で、権力者の叔父にたかった俗物という雰囲気である。
でも、そんな行き当たりばったりで日和見主義に見える彼の行動も、生き抜くために必死に模索した結果ではないかと思う。彼の父アロイスは、ヒトラーミュンヘン一揆を起こしたのと同時期、ドイツで新しい妻と結婚し、重婚の罪で逮捕されかけていた。自然な流れと言うべきか、新しい妻とバーを経営していたアロイスは、ウィリアムと距離を置きたがった。ロンドンに残された貧しい母とともに、どうやって上手く生活していくか……。そう悩んだ末の行動が、はたからは行き当たりばったりに見えるだけなのかも。
ウィリアムが長男のミドルネームに「アドルフ」と付けていたことや、ウィリアムの息子たちが皆子供を作らないと誓いあった(真偽は不明だけど、実際にかなりの年かさだが子供はいないようだ)ことなど、印象的なエピソードが多かった。

『ナチの子どもたち』を読んだときも思ったけれど、ナチ高官やヒトラーと血縁関係にあることは、私たちが想像するよりもずっとおおごとなんだろうな。