なんの変哲もない日

この田舎の犬は都会で死ぬかもしらん

ボーヴォワールの『第二の性』

書いてほしいことが書いてある感動ととともに、70年以上たっても大して状況が変わっていない悲しさを感じる本を読んでいる。

とくに印象に残ったところをふたつほど。身に覚えがありすぎて気分が悪くなる。

「抽象的な議論をしていて、男性に『あなたは女だからそんなことを考えるんだ』と言われていらいらさせられたことが何度かあった。しかし私は、『それが真実だからそう考えるのよ』と答えるのが唯一の防御策だとわかっていた。(中略)『あなたは男だから反対のことを考えるのよ』とやり返すなどとんでもないことだった。なぜなら、男であることは特殊性ではないとされているからである。男は男であるから正しいのであり、間違っているのは女の方なのだ。」(14ページ)

「『女? 簡単ですよ』と、単純な言い回しが好きな人たちは言う。『女とは子宮であり、卵巣である。女とは雌である。女を定義するにはこの言葉で十分ですよ』。この『雌』という言葉は、男の口をとおると侮辱的なひびきをもつ。そのくせ、男は自分の動物性を恥ずかしいと思わず、『あいつは雄だ!』と言われると、かえって得意になる。」(42ページ)